チャレンジと称賛の企業風土から生まれた「改善一番(ファースト)」
従業員の間に高い改善意識が受け継がれているウイルテック。年に一度、日々の改善活動の取り組みを発表する「改善一番(ファースト)」を開催しています。発表会の企画・運営担当者と出場経験者、両者の目線から「改善一番」をご紹介します。
自分たちの頑張りをアピールし、全社員の意欲と交流をもたらす場をつくる
運営側では発表会をとりしきるだけでなく、発表に不安を抱く参加者に対して細やかにアドバイスを行うなどあらゆるサポートを行っています。第1回から現在にいたるまで携わる担当者から見た「改善一番」の様子とは?
- 「改善一番」企画・運営担当
マニュファクチャリング事業本部/事業管理課 課長 - 大瀬 晃一
始まりは「日々の改善活動は称賛されるべきものである」の思いから
製造部門において日々の業務は生産です。製造現場のなかで業務が完結するため外からはわかりませんが、もっと良くなるように日々工夫や頑張りがあります。しかし、それを発意する場がない。それは非常にもったいないということで、改善発表会が2006年にウイルテック九州で始まりました。初めての試みだったため、当時グループ会社だった従業員が自発的に取り組めるように発表会名を募集しました。すると、たくさんの応募が集まり「いいじゃん とにかく チャレンジ」の頭文字から「ITC」に決定しました。この発表会が受け継がれ、2017年に全国規模に拡大し、現在の「改善一番」になりました。
1分1秒にこだわる改善活動はモノづくりにとって最も必要なもの、そしてそれは称賛されるべきものです。自分たちの活動をアピールし、称賛される場所である「改善一番」は当社の改善活動の基礎となっています。
ウイルテックでは全国のあらゆる事業所で、日々改善活動が行われている。
事業所も部門も超えて盛り上がる、全社員参加の“お祭り”
「改善一番」には全国の事業所から改善自慢が集まります。ほかの事業所が手掛けている製品や作業内容を見て「こんなものを作っているんだ!」「こんな大変なことをしているんだ!」という新たな発見があります。また製造部門だけでなく、経理部門や採用部門などの間接部門、グループ会社のチームの参加もあるので、普段一緒に仕事をすることのない部門の業務についても理解を深めることができます。
審査員を務める当社の役員は製造現場からスタートした方がほとんどです。現場のことを熟知しているので「ここで苦労したと思うけど、どうやって気を付けた?」などの言葉をかけられることや、直接指導やアドバイスをされることもあります。なかなか会うことのない役員の方とお話しすることで、参加者は自分の頑張りを認められたことを実感することができると思います。発表の様子が評判だった方のなかで、現在では事業所長になっている方もいます。
発表会は自分たちの頑張りのアピールとともに、さまざまな方とお話しすることができ、知見を広める機会でもあります。参加するときっと「ウイルテックは楽しいところだ」と感じてもらえると思うので、ぜひできるだけ多くの従業員の方に経験してもらいたいです。
発表会のテーマはその時々の想いや時勢から選定される。第1回は初めての「挑戦」、第2回は終わらせないように「継続」、第3回は参加部門が広がり「進化」、第4回は上場に向けて「一心」、第5回はコロナウイルスに負けないように「不屈」。
「次は私たちが優勝するんだ!」年々高まる参加者たちの意欲
「改善一番」は回を追うごとに参加者の方々の様子が変わりつつあります。特に第3回、第4回の頃から参加者の優勝に向けて強い意思が見え始め、なかには連覇を狙うチームもあります。
発表内容についても参加者の力量がどんどん上がっており、どのような表現をするとわかりやすいのか、それぞれに工夫が凝らされています。印象的だったのはアニメーションを多用した発表。それまでと目先を変えた“見る人を楽しませる”という発想がみんなの心をつかみ、その年の優勝を見事に勝ち取りました。大勢の前で発表するのは非常に勇気がいることですが、発表が終わった後は「成し遂げたぞ!」という自信にあふれた表情を見せてくれます。
発表者の緊張感や熱量は、「改善一番」の会場で最も感じることができます。そのため運営する私たちはますます発表会の規模を大きくし、できるだけ多くの事業所や部門、いずれはグループ会社全体に参加していただき、改善の輪を大きく広げていくことを目指しています。
現在の発表会は100人規模。すべてのチームに社長から総括と激励の言葉が贈られる。
2019年度「第3回 改善一番」優秀賞受賞
入社後、工程リーダーを経て、工程管理者となった春田は2019年「改善一番」に参加し、みごと入賞。当時の現場の工程メンバーは24名。皆の意見を丁寧に聞き発表に臨んだ、当時の様子や思いを聞きました。
- 西日本事業部 製造2課 京田辺事業所 係長
- 春田 陽平
「いつも現場でやっていることを紹介するだけ」という言葉に参加を決意
当時の上司から声をかけてもらったのがきっかけでした。しかし当時現場内で取り組んでいた改善内容はそれほど効果金額が大きくないものだったので、何に取り組めばいいのだろう? 効果が少ない改善はダメかな? など不安でいっぱいでした。そうして悩んでいたとき、上司が「効果金額の問題ではない、取り組むことに意味がある。いつも現場でやっていることを紹介するだけで難しく考えなくていい」と言ってくれました。その言葉に後押しされ、挑戦することに決めました。
メンバーに聞き取り、上司に一から教わりながら発表資料を作成
資料の準備にはトータルで2~3ヵ月かかりました。業務は現場作業なので、発表するなんて初めてのこと。まず何から始めて、何を行ったらいいのか戸惑いました。資料を作成するソフトも使ったことがなく、表現方法や説明の仕方についてもさっぱりわかりませんでした。
まず各工程のメンバーに現場の様子を詳しく聞き取り、とにかく自分なりにいったん形に。それを上司に見ていただき、アドバイスをもとに修正、その作業を何度も重ねて仕上げていきました。発表時間も評価対象のため時間配分にも気を使い、資料を作り直すたび読み合わせを繰り返しました。
緊張の本番。練習通りにはいかなかったけど…
会場には予想以上に人が多く、かなり緊張しました。他のチームの発表を見ながら待つのですが、自分たちの番が近づくにつれて、もう心臓がバクバク。“いつも通り”と心がけましたが、いざ本番になると緊張でいつもより早口になってしまい、予定時間より早く終わってしまいました。そのため入賞したときには驚きました。
他の参加者は初めて会う方ばかりでしたが、待っている間に「どんな感じですか?」「工場ではどのようなお仕事をされているのですか?」など声をかけあい、お互いに緊張をほぐしました。普段は基本的に事業所にずっといますし、当時はほかの事業所がどんな作業をしているのかまったく知らなかったので、発表会はお会いすることのなかった方たちとコミュ二ケーションや情報共有できる場でもあると思いました。
より一層の団結力と新たな改善を現場にもたらした
現場のチームに入賞を伝えると歓声があがり「みんなで頑張った甲斐があった!」と喜び合いました。社内報にも僕たちの記事が掲載され、全員で読みました。発表が現場の一層の一致団結につながり、モチベーションが上がったと感じます。
また、発表テーマを選定するなかで、改めてチームの一人ひとりに話を聞くうちに「ここを直したい」「こうだったらいいな」などの声があがり、新しい改善を始めるきっかけに。より良い作業環境・生産性向上を目指してみんなで考えることで一人ひとりの品質に対する意識が高まり、現場の声が今まで以上にあがってくるようになりました。「改善一番」に参加したことで、改めて全員で取り組む大切さを感じました。
改善の大切さを、次の世代に伝えてゆきたい
「改善一番」は普段の自分の頑張りをアピールでき、共有できる場所だと思います。自分たちの改善を見てもらいアドバイスをいただくことで次の改善に生かせる、他のチームの発表を見ることで違った視点を持つことができ今後の参考にできます。自分自身にとって、発表の場を持つことや、自分たちのことを知ってもらうことは非常に良い経験になりました。
今は僕が現場の管理者やリーダーの方に参加をすすめる立場になりました。最初は乗り気ではない方にも、しっかり説明すると前向きになってもらえました。僕も上司から声をかけてもらったときは不安でしたが結果的に良かったですし、参加の経験を通して今の立場にあります。そのため今後も現場の管理者やリーダーに改善の目的や重要性をしっかり伝え、僕が当時上司から教えてもらったことを引き継いで、みんなにもステップアップしてもらいたいです。
「改善一番」は、企画・運営者、発表者、審査員、そしてチーム全員がそれぞれのカタチで参加し、作り上げているイベントです。これからも進化しながら、改善の歴史を積み重ねていきます。